この表題の画家の特別展を高校生の頃、友人に誘われてついていったことがありました。私もその友人も運動部でした。わたしは美術を選択していましたが、それまでは熱心に美術館に行くほどではありませんでした。
その友人はこの街でセガンチーニが揃うことはまずないから見に行こうと誘ってくれました。断る理由はなかったので、ついていったのでした。
すると、そこには目を見張る明るい絵が並んでいました。この画家は北イタリアの生まれの風景画家です。この明るい画面は北イタリアに広がるアルプスを背景にその高原地帯の光線の明るさがそのまま絵になったかのようでした。
この画家はほとんど色を混ぜることをしません。色は混ぜてしまうと彩度がどんどん落ちてしまいます。そのことを十分知っていたのです。
ほとんど点描ともいえる画法です。タッチは大きな絵でも小さく変わりません。どれほどの時間をかけて描いたのでしょう。気の遠くなりそうな作業です。
どの作品もはじめて見る絵でしたが、日本にも倉敷の大原美術館(一見の価値あり)に「アルプスの真昼」など有名な作品があります。日本には白樺派の人々が紹介しました。明治の末のころのことです。
どうして私の友人がセガンチーニのことを知っていて、美術館に足を運ぼうとしたのか、たずねたのかもしれませんが、忘れてしまいました。それよりも鮮烈なそれらの絵の印象はいまだに忘れることがありません。
それ以来、私はひとりでもその丘の上にある美術館に足を運ぶようになりました。ある展覧会では、私が最後の展覧会の来館者だったこともあり、私が見終わった絵から片付け始めている様子が何ともおかしかったことを覚えています。
NHK世界美術館紀行〈8〉ウィーン美術史美術館・オーストリア美術館・セガンティーニ美術館
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